− チュウヒについて −
【 性差や個体差 】
チュウヒはオスよりもメスの方が大きな体格をしている。(性的二形)
体の大きさは狩りのしかたにも影響しており、オスは機動力を活かしてネズミ類やオオジュリンなどの小型の獲物を捕るのが得意。一方、メスは力の強さを活かしてカモ類やツグミなどの大型の獲物を捕るのが得意。
体長 : オス 48cm メス 58cm
翼開長 : オス 113cm メス 137cm
体重 : オス 558g(525〜650g) メス 813g(700〜950g)
また、チュウヒは羽色の個体差が大きいことが特徴。
幼鳥と成鳥、オスとメスで羽色が異なることに加え、さらに個体によって羽色が異なるため、様々なバリエーションがある。
<オス成鳥>
上尾筒の白色や、風切羽や尾羽の青灰色がはっきりしている傾向がある。
<メス成鳥>
全体に茶色が強かったり、翼下面に大きな白斑がある傾向がある。
<オス幼鳥>
頭部に白色部があり、体の一部にも白色部がある。
<メス幼鳥>
頭部の白色部がはっきりしており、体全体に白色部分が多い傾向がある。
【 国内の個体数 】
国内に生息するチュウヒには、国内で繁殖・越冬する個体群と、ユーラシア大陸で繁殖して越冬期に日本に渡ってくる個体群の2群がいる。
国内繁殖つがい数 : 110〜140つがい (環境省の推定値は約90羽)
国内越冬個体数 : 350〜450羽 (推定値)
国内繁殖つがいの多くは北海道で繁殖しており、他にも東北〜北陸地方などで繁殖している。関東〜九州地方にはごく少数が繁殖している。
越冬期には関東地方に多くの個体が越冬しており、他にも北陸・東海・中国地方などでまとまった数の個体が越冬している。
【 絶滅危惧種 】
生息地での自然開発や植生遷移により、近年はチュウヒの生息環境が減少している。
そのため、「環境省レッドリスト」では絶滅危惧1B類、「種の保存法」では国内希少野生動植物種に指定されている。
【 チュウヒの1年 】
◆春期
越冬地から繁殖地に移動し、繁殖行動を始める。
積雪地では雪解け後に繁殖行動を開始するため、北海道などでは少し遅れて4月頃から繁殖行動が観察される。
【2月下旬〜4月】 フライトディスプレイ(波状飛行)を開始
【3月下旬〜4月中旬】 造巣開始
【4月上旬〜4月下旬】 産卵(3〜6卵を産み、メスが抱卵する)
【5月上旬〜6月上旬】 ヒナの孵化(遅いものでは7月中旬)
◆夏期
7月下旬〜8月中旬には幼鳥が親鳥から独り立ちする。(生後60〜75日頃)
親鳥は育雛を終えると、幼鳥を残して繁殖地から姿を消す。
◆秋期
10〜12月に越冬地への渡りを行う。
一旦移動した後、12月以降にさらに別の越冬地へと移動する個体もいる。
◆冬期
採食場所とねぐらの間を行き来する生活を送る。
3月前後には春の渡りが始まり、越冬地では4月前後に越冬個体の姿が見られなくなる。
【 生息地 】
主に湿地や草地に生息する。
(主な生息環境 : 河川敷、湖岸、遊水地、干拓地、埋立地、塩田跡地)
【 餌 】
主に鳥類やネズミ類を食べ、カエル類なども食べる。
繁殖期にはオオヨシキリなどの小型鳥類やネズミ類の割合が増え、越冬期にはカモ類やツグミなどの中型鳥類の割合が増える。
【 営巣環境 】
国内で繁殖するタカの仲間では唯一、地上に営巣する。
巣は主にヨシ原に造るが、北海道ではササ原に造ることもある。巣の直径は50〜130cmほどで、ヨシやササなどからできている。
チュウヒの産卵数は3〜6卵が一般的だが、最大で7卵の例も観察されている。
【 チュウヒの狩り 】
チュウヒは聴力を活かした狩りを行うことで、ヨシ原などの影に潜む獲物を強襲して捕まえる。
狩りの際には獲物を追いかけまわしたりはせず、草地上空の低い位置を羽ばたかずに帆翔しながら獲物を探し、見つけたら急降下して獲物に襲いかかる。(不意打ちハンティング)
− トップへ戻る −